圧倒的な暴力または脅威を前にした時、人はどうするのか。
そしてその先の未来に光はあるのか。
ドロッセルマイヤーズ&アークライトの贈るビッグプロジェクト第1作目は上杉真人氏のデザインする「ボルカルス」。2019春ゲムマで発表された期待のシリーズ第1作目の一般発売が始まったので、今日はその内容に迫ってみたいと思う。ソロプレイはできないけど、怪獣好きとしては避けて通れませんでした。
もちろん、深夜のぼっちプレイでだ。ようやくいつもの状態に戻ってきたな!(いいのか...)
- Kaiju on the Earth(カイジュウ・オン・ジ・アース)
- ボルカルス(Vulcanus)
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Kaiju on the Earth(カイジュウ・オン・ジ・アース)
画像引用:Kaiju on the Earth - カイジュウ・オン・ジ・アース
2019年春、突如発表された「Kaiju on the Earth」。未だかつて耳にした事がないこのプロジェクトの第1弾「ボルカルス」が先ごろ発売されたぞ。Makuakeでクラウドファンディングを募っていた際にも、このカイジュウをテーマに据えた連作の全貌を伺い知ることはまだ出来ない状態だ。予定されているデザイナーはいずれも日本を代表する著名なボードゲームデザイナー達。
第1作:上杉 真人「ボルカルス(Vulcanus)」
第2作:金子 裕司 2020春
第3作:林 尚志 2020秋
3名の気鋭のボードゲームデザイナーを擁するこのプロジェクト、我々をどんな世界に導こうとするのか、ボードゲームも好きだが怪獣も好きなファンとしてはやはり興味は尽きない。
ボルカルス(Vulcanus)
プレイ人数:2〜4人
対象年齢 :10歳以上
プレイ時間:60〜80分
Kaiju on the Earth - カイジュウ・オン・ジ・アースWEBサイト
コンポーネント
ボルカルスはまずそのボックスを愛でたい。
箱裏に踊るこの明朝体。もう昭和の特撮モノを彷彿とさせるインパクトだ。
東京が滅びる=人間が滅びる第一歩ではないだろうか。
ちょっとした映画さながらの文字が踊る外装もイイ。
コンポーネント全体
本作のコンポーネントで一番Goodだったのがサマリーシート(4種)とプレイシート(怪獣&人間)の作り。軟質系プラスチックがベースになっているのか、紙製のペラペラした感じがなくなっているよ。
ルールブック
外装の派手さと対比させているのか、ルールブックはとてもシンプルかつ冷静な雰囲気だぞ。シックな文字づかいがコレまた刺さる。
サマリーシート
人が選択する4つの職業と手番の流れが確認できるサマリーシート。各役職で固有能力があって、プレイに幅をもたせている。
なお、裏面は怪獣のサマリーだ。
マップボード
ボルカルスが暴れまわる東京を表している。下段は怪獣、人間双方の目標となる防衛・被害トラックが並んでいるよ。
計画ボード
手番を示す計画ボード。プレイヤーは手札をここにプレイして、全体の計画を立てていく。わずかな狂いが全体に影響を及ぼしていく。
計画策定には砂時計を使い、時間内に計画を立てねばならない。これがとてもシビアで緊迫感を高めてくれる。
人間ボード
人間側のプレイヤーが使用するシート。主に予算、調査状況、トークン残数を示す。自衛隊、消防、拠点の各トークンは有限だぞ。
怪獣ボード
怪獣側のシートは人間側に比べてプラス要素が大きい。成長の過程で得られる進化トークンを使用して、進化ツリーを進めることでアクションが強化されていく。
トークン類
調査タイル&予兆タイル
調査タイルを獲得することでボルカルスの生態を明らかにしていく。調査が進むと人間側に恩恵があるよ。
攻撃タイル・調査状況マーカー・資金タイル・進化タイル
資金タイルのデザインがなんかアレ。ちょっと風刺入ってませんかねw 好きです。
破壊ボーナスタイル
タイルというかカード。これがまたひどい災厄をもたらすのだ。
カード類
イベントカード
イベントカードは毎ラウンド起きる災害が記されている。通常で使用するイベントは予兆マスに溶岩を2個置くだけ(それだけでも酷い)だが、選択ルールで使用するカードにはそれを超える災厄が記されている。なお、写真手前の「怪獣崇拝者」と「隕石」はmakuakeファンディングとゲムマ会場特典のプロモカードだ。
後ろ姿も渋いボルカルス
アクションカード(怪獣)
見てお分かりの通り、器用なことは全くしないボルカルス。ゴジラのごとく口から火炎ビームも吐いたりしない。
が、歩くだけで数万人規模の人間を亡き者にするのである。もうやりたい放題なのだ。
アクションカード(人間側)
怪獣災害対策本部に召集された方々。とても現実的な役職が並んでいる。
基本的なアクションの種類はどの職業も一緒である。ただし「統合幕僚長」が自衛隊を追加で1マス進めることが出来るようになったり、役職に応じた追加効果がカードに設定されている。
さらに各役職の特徴に応じて、決め手となりそうな特殊アクションカードが1枚ある。デッキの中でコレらをどう活かして連携するかが人間の勝利につながるぞ。
ミニチュア&コマ
ボルカルス
こやつが災害そのもののボルカルスだ。
東京をモサモサ歩き回るだけで悲劇をもたらす怪獣「ボルカルス」の勇姿である。どうしても怪獣に肩入れしたくなるのはゴジラファンの習性のようなものだ。
自衛隊・消防車コマ
各4つづつ。自衛隊は人を救出出来るし、消防車は溶岩の延焼を抑えることが出来る。
人間コマ・要人コマ・拠点コマ・溶岩コマ
マップ上に配置されるこのコマ達の行く末が、東京の未来を決めるのだ。
ボルカルスのルール
ボルカルスは準備がちょっと大変かもしれない。コマやタイルを小分けにしておけばパパッと出来るかな。個人的に小さなコマを並べるのが苦手なだけなのだ....
正確に書くと結構な量の手順になるのでココでは割愛する。ルールブックをよく読んで準備しましょう。
で、準備が終わるとこんな感じの風景がテーブル上に広がるぞ。
準備完了後の状態
実際のプレイでは向きを工夫して遊びやすいように並べれば良いのだけど、結構スペースを使うことは確かである。
手番の流れ
ボルカルスは以下の流れでゲームが進むよ
1)イベントフェイズ
2)計画フェイズ
3)実行フェイズ
4)溶岩フェイズ
5)拠点フィイズ
各フェイズでの処理はルールブックを読もう!(手抜きとは言わない...)
計画フェイズの特徴
計画は常に人間側から行う。プレイヤー同士がカードを見せ合うことは禁止されているけれど、口頭で相談は出来るようになっている。その相談内容を怪獣側のプレイヤーは聞いてから計画フェイズを行うことが出来るのだ。(会話の秘匿は禁止)
さらに人間側・怪獣側ともに2分間という制限が設けられている。この2分をすぎるとランダムにアクションカードを配置しなければならないので、速やかな計画立案が求められるのだ。
ゲームのポイント
人間側と怪獣側では取るべき戦略が異なるのが非対称協力型ゲームの魅力。特に人間側は限られた時間で有効に計画を実行しなければ、歩くだけで都市を破壊する怪獣に立ち向かうことは出来ない。怪獣はアクションで人や車両を破壊出来るだけでなく、撒き散らした溶岩でも被害をもたらす事が出来る。
溶岩フェイズで霞が関が壊滅した時の様子
自分のアクションと、東京に溢れている溶岩がどのくらい被害をもたらすのか、常に把握しながら行動すれば、さらなる被害を首都にもたらす事が出来るという訳だ。
その他にも把握しておくべきルールはある。自分のデッキから引いたカード運が与える影響は軽微なものだ。しっかり戦略を練る事でゲームの展開をある程度コントロールが出来るルールになっているぞ。
ルール確認してみた感想
深夜にひとり、久しぶりに1人2役でボルカルスのルール確認がてらモソモソ遊びましたよ。ええ、これはヤバイです!かなり面白いのでは!
ボルカルスは進化する!
まず、ボルカルスは進化します。進化するとアクションに追加効果がつくよ。書かれている効果は決して派手ではないのだけど、確実に人間を苦しめるようなジワリとした効果が描かれているのだ。
2分間の緊張がヤバイ
計画フェイズでの2分間は非常に緊張感高まると思う。一緒にプレイするメンバーとの意思疎通度合いが、計画の成功にかかっている。なんかザ・マインド的な心の読み合いまで必要なんじゃないか?くらいシビアだけど、必要最小限の会話で作戦が成功したりするともうそれだけで恋が芽生えるくらいのレベルでは?
人間コマは1コマ1万人の扱いです
フレーバー的な設定だけど、人間コマは1コマ1万人の設定になってたかと思う。写真はお試しプレイ終盤の様子だけど、怪獣がもたらした被害はざっと21万人である。対して人間が救出に成功したのはわずか7万人。この小さなフレーバー設定が妙に現実的な感じがして、よりボルカルスの世界に厚みを持たせている気がするのだ。
まとめ
正直に告白しよう。最初は「ボルカルス!ミニチュアかっけー!うひょー!」っていう開封レビューを書く気満々だったのだ。(さーせん...)
ところがである。ルールを確認していたら、このゲームはそんな単純なゲームではない事に気が付いたのである。パートーナー達との意思疎通が重要な計画フェイズ。それを2分という時間で区切る事で生まれる緊張感と混乱。本来知性がないはずの怪獣が、人間の作戦を聞いてから暴れまわる事での被害拡大は、人知を超えた災害への畏怖すら感じる。
その後に続く溶岩フェイズ・拠点フェイズでの被害と救済のバランスも絶妙ではないかしら。実際、戦略なんか頭に全く入れてない状態でペチペチカードを置いてルールを確認してただけなのに、微妙な僅差でゲームが終わるというのは絶対にゲームバランスがいい証拠だと思う。事実、遊んだ方からも絶妙だ!という声が多数あがっている。
パンデミックに代表される協力型ゲームの楽しさと、非対称系ゲームなのに絶妙な力関係のバランス。そして怪獣フレーバーをシステムがドラマチックに演出する調整。コレはもうドラマでありますな!通常のレベルで満足できなくなったら、イベントカードを差し替える事で難易度調整も可能だし。(難し場合の調整もルールブックに記載があるよ)
- 東京を破壊し尽くす怪獣ならではの快感
- 仲間と協力し、人間を救う使命感
どっちも楽しめますな!良い人も酷い人もウェルカムだぞ。
あと、ぜひルールブックのフレーバーにも目を通してほしい。今回の作戦名は「イ三号」作戦(確か...)だからな!
むほほ、ヤバい。コレは..ボルカルス、ヤバい。。。
(=ↀωↀ=)✧
Kaiju on the Earthのプロジェクト、続編にも期待だぞ!
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